1998年12月1日火曜日

デフレ経済はとにかく生き抜こう


今回の不況は想像以上に長引くとの見方が次第に強まっている。景気対策を小出しにしてタイミングを失するうちに、日本経済の伝統的な牽引役である民間設備投資が、いよいよ下降循環に入ってしまったからである。

設備投資の循環サイクルがいったん下向くと3年は続くのが過去の例だ。その間、在庫循環などの短期的な景気サイクルが上向いても、また少々の財政を出動させても、人為的な手段ではなかなか景気は浮揚しないのである。

そのうち頼みの米国経済も怪しくなってくる。アジア経済が最悪期を脱するとしても日本経済を牽引するにはいかにも小さい。ということで、やっぱり不況は長期化するように見える。そういった状況のなかで、我々はどう対応すべきなのだろうか。ひとつ皆になりかわって考えてみよう。

まず企業であるが、オペレーション規模の適正化がなによりも大切との認識が広まっている。需要が縮小するなかで収益を上げうる企業体質への転換である。これは短期的には縮小均衡となるが、市場に参加する企業数の淘汰も同時に進むので、生き残れさえすれば最終的には売上高は拡大すると期待できるのだ。
家計もデフレ経済のなかで出来るだけ身軽になろうとしている。わが国には「シンプルライフ」「清貧」をよしとする伝統があり、極端な倹約も美意識に沿ったかたちで実行可能だ。支出は最小限にとどめひたすら資産の蓄積に励む。また今から生活程度を下げておけば年金生活へ移行してもショックが少ない。貯金はまさに一石二鳥なのである。

一方、資産面では各人の金融資産の目減り防止が最大の課題となる。バブル崩壊で地価、株価をはじめ資産価格が大幅に目減りしてしまったが、預貯金で保有する金融資産は、相当部分がバブル期に家計が企業部門に高値で売った不動産の代金であるが、まったく目減りしていない。問題は確実な投資先が少ないことだが、幸い巨額の国債発行と財投(郵貯)は毎年続くのでそれに投資すればよい。投資の収益は税務署が納税者から責任を持って取り立ててくれるので安心である。警戒すべきは「調整インフレ」だが、最近はこの議論も下火になった。

上記がほとんどの企業と家計が考えていることではないか(図星でしょう)。でも皆が同じ行動をとると「合成の誤謬」が生じる。よって不況は長引くのである。

しかし悪いことばかりではない。不況が続く限り日本産業は合理化を続けるので競争力が向上する。また家計も貯蓄を続けるので資金がたまる。だから日本経済は、将来的にはますます巨大な資金といよいよ強い国際競争力を持つことになるだろう。「合成の誤謬」転じて「合成の大正解」である。再び日米摩擦? でも今度はもっと謙虚に行きたいものだ。

(橋本尚幸)