2013年7月9日火曜日

ポール・J・ザック『経済は「競争」では繁栄しない」(The Moral Molecule)

邦訳版の題名は『経済は「競争」では繁栄しない』というものだが、優しさ一辺倒の現代ニッポンの風潮に乗じてカネ儲けようとする出版社の助平根性が垣間見えた感じで、いやらしい。原題は "The Moral Molecule" 。「道徳的分子」とでも訳すべきか。あるいは『経済は「協調」だけでは繁栄しない』との題名にしても著者の言いたかったことと大きくは違わなかっただろう。著者が明らかにしたのは血液中には人間の協調・信頼をもたらす物質〔オキシトシン〕と暴力と競争をもたらす物質〔テストステロン)の二つが微量含まれており、それらは人間行動に大きな影響をもたらすということなのだから。

攻撃性に特化したチンパンジーも協調性の権化であるボノボも共にジャングルから脱出することが出来なかった。ジャングルを脱出し新天地の王者となったのは攻撃性と協調性の両方を適度にバランスよく保有していたホモサピエンスなのだ。著者も両者のバランスの大切さを何度も言っている。人間万事バランスが大事。

もっともすべての商取引の原点は信頼関係にあると言うことは、太古の昔から変わらない。現代社会はちょっと金儲けの方にぶれている感じもする。

著者は20年間もあらゆる機会に人々を注射器片手に追っかけ回し、膨大なサンプルを集め、ついにこの微量血液物質を発見し「神経経済学」という新しい学問分野を切り開いた特異な人物。アダム・スミスの『道徳感情論』を高く評価する経済学者でもある。

感心するのは、こんなへんな研究にお金を出し続けてきたアメリカの大学。ニッポンとは懐の深さが違うわ。

経済は「競争」では繁栄しない――信頼ホルモン「オキシトシン」が解き明かす 愛と繁栄の神経経済学

1 件のコメント:

橋本尚幸 さんのコメント...

ヒトは取引相手から不当な取り扱いを受けていると判断すると〔つまりぼられていると判断すると〕次回はその相手を罰する行動に出るという。もっともなことである。どっかの県知事は県の特産品として「一個1万円」のマンゴーを売り出し大儲けしたと自慢していたが、その後一年、同県の物産展の売上は激減している。天網恢々疎にして漏らさずなのだ。